2026年1月現在、AIと壁打ちしながら自分の考えを整理してみた。
はじめに
この1-2年で僕自身の制作速度や範囲が著しく向上したのは、間違いなくAIのコーディングアシスト(今はもうagentに書かせている)が一番の理由。恩恵をとても受けていて、とてもありがたく思っている。
既にAIの知識範囲は1人の人間を優に超えていて、局所的な場合を除いてソフトウェアエンジニアリングとしては既に人間の能力は超えているという印象。局所的というのは、120%クオリティが必要な所であったり、皆さん経験あるように話が込み入った時にバカな解答をしてくるあれ。ただこれも前提条件がAI側に投げ切れていない、結果AIが把握しきれていないのが原因だと思う。
僕は意匠的表現をコードで作ることを生業としているけど、こういった人によって解釈評価が変わる部分については、AIの助力による恩恵はあるものの決定は結局人であり、責任を持つのが自分なので、あまり脅威という話にはつながらないかなと思っている。
AIは「知識範囲を120に拡張するツール」
よく話しているのだけど、AI利用による恩恵については、自分が知っている範囲を100としたとき120くらいまで拡張してくれるツールという認識。
これまでは必死こいて勉強してググって、ちょっとずつ範囲を100から105に広げてきた。これがこれまでの15-20年くらい。ここ1-2年くらいはその拡大作業を一旦止めて、これまで広げた知識範囲100をAIを使って120くらいに広げながら仕事してる感じ。範囲を広げていくフェーズが止まって、好きな部分を掘り下げていってるイメージかな?
拡張した20は「借り物」
ただ正直なところ、AIで拡張した20って自分の力にはあんまりなってない印象。例えるなら本とか記事読んで知ってるけど自分で実装してない状態に近い。だからググって5ずつ広げてたのを一旦止めてる感覚と書いた。
ただ最低限の知識があった上での範囲+20なので、仕事上ではちゃんと使える。もちろんそこが本職100の領域ど真ん中の人に比べたら質は落ちると思う。ただAIは膨大な範囲を80点取れるスーパープレイヤーという認識なので、それで現状は問題ない。
これまでググって5ずつ広げていたのは、広がる範囲が狭いから認識しながら成長できた。今は20の範囲が広すぎて追いきれない。ただめっちゃ「借り物」寄りではあるけど、全く知らないよりは知ってる状態に近付いているので、学習という意味では1ずつくらいは進んでるんじゃないかな。超感覚論で伝わりづらいなぁ。ごめん。
100点以上の部分は人がヒーヒー言うしかない
自分の守備範囲を深掘りする時のAI利用は、知識範囲を120に広げて仕事するのとは別軸の話だと思う。ここではメンター的に壁打ちしながらとか、リサーチしてもらいながら引き続きコツコツやっていく部分。AIができたからといって劇的に精度や質が良くなる話ではない。言ったら点数の100点以上の部分。ここはもう人がヒーヒー言いながらやるしかない。
仕事の構造が逆転した
今の仕事の割合としてはAI80点が3割、100点以上を自分でヒーヒーが7割くらい。時期や案件によるけど後者が割合減ることはないと思う。
これ、実は比率が逆転している。これまでヒーヒー言いながら完成させる80点部分が7-8割で、本当はやりたい100点以上の意匠部分が1-2割しかできないという構造だった。
つまり自分の守備範囲の認識が変わった。美意識を向ける職人的な範囲と、全体像として完成させなければならない部分がある。これまで自分が担当できなかった、人にお願いしないとできない・回らない部分を、自分で賄えるようになったという感じ。
意思決定が自分1人で完結できるようになったのはめっちゃでかい。これまでも自分1人でやってきてる方なんだけど、それがより進んだ。知識範囲が120に広がったことで、意思決定も120の範囲で自分で完結できるようになった。借り物の20であっても判断は自分でできるから、表現としての一貫性は保てる。要するにより一人だけで全部終わるようになっちゃった。果たして良いのか悪いのか??10年後に答え合わせなのかな。
若い人のAI利用について
よく聞かれるのだけど、ツールなので使わないという選択肢はないと思う。その上で、自分自身の知識範囲100自体を広げないとこの拡張ツールを使ううまみがないよねという話かなと。
ただもうそれはこの業界での現場経験歴が長い自分が言ってもポジショントークにしかならないよなぁと思う。若い人たちが自由に考えながらやったらいいんじゃないかな。
まとめ
- AIは「80点を広範囲に取れるスーパープレイヤー」
- それによって自分の守備範囲が100→120に拡張
- 拡張した20は「借り物」で自分の血肉にはなりにくい
- でも意思決定は自分で完結するから、表現の一貫性は担保される
- 結果、80点作業が圧縮されて、100点以上のヒーヒー作業に7割使える
知らんけど。(これは経験者からの一視点であって正解じゃないよ。という保険)
イベント用 Q&A(2026年1月)
以下は登壇イベントでの質問に対する回答まとめ。
Q1. よく使ってるAIはなんですか?
Claude Opus 4.5を主に使ってる。コーディングは今はもうagentに書かせてる状態。
Q2. AIによって変わったこと
仕事の構造が逆転した。
これまでヒーヒー言いながら完成させる80点部分(全体を完成させなきゃいけない作業)が7-8割、本当にやりたい100点以上の意匠部分が1-2割しかできなかった。今はAIに80点部分を任せて3割、100点以上のヒーヒー作業に7割の時間を使えるようになった。体感で制作時間は1/5くらいになってる。
知識範囲が100→120に拡張された感覚。
15-20年かけて広げてきた自分の知識範囲100に対して、AIが20くらい上乗せしてくれる。その20は「借り物」で自分の血肉にはなりにくいけど、判断は自分でできるから表現の一貫性は保てる。
意思決定が1人で完結できるようになった。
これまで人にお願いしないとできなかった・回らなかった部分を自分で賄えるようになった。
Q3. やってる人が少なそうなマニアックなAIの使い方はありますか?
① AIのための知識ベースシステムを構築してる
Dropbox内に共有知識ベースを作っていて、プロジェクト横断でAIが参照できる構成にしてる:
- agents/ – 専門エージェント(レビュアー、プランナー)
- rules/ – 常時適用ルール(コーディングスタイル、パフォーマンス)
- skills/ – 手順書(セットアップ、デプロイ)
- categories/ – 技術分野別の知見蓄積(Three.js、oF、過去プロジェクト)
- memories/ – 断片的な記憶、一時メモ
AIに「自分の分身」として動いてもらうための外部記憶システムを作ってる感じ。「AIを使う」だけじゃなくて「AIが効果的に動けるように環境を整備する」という使い方。これまで自分用に作ってたフレームワークとかスニペット全部渡して動いてもらってる感じ。めっちゃ楽〜。
② AIをマテリアル生成に使う(ベイク処理的発想)
2年前くらい、まだリアルタイム処理が難しかった時代に、ゲームCGで言うベイク処理みたいな使い方をしてた。春夏秋冬でキーワードを数百個出力させておいたり、カラーパレットを無限に生成させて、それらを日時に合わせてコンテンツで使用する。AIを対話相手じゃなくて素材工場として使う発想。今はもうリアルタイムでやってる。
③ コミットメッセージ→技術ブログ記事化
インスタレーション案件で全コミットメッセージを毎回詳細に書かせておいて、最終的に全コミットログから開発の紆余曲折を技術ブログ記事にした。
KIRIN からだウォーズ GAME1 – Behind the scenes
KIRIN からだウォーズ GAME2 – Behind the scenes
Q4. 人の役割とAIの役割はどのような棲み分けになると思いますか?
AIは「80点を広範囲に取れるスーパープレイヤー」。
膨大な範囲を80点で取れる。だから80点作業はAIに任せられる。
100点以上の部分は人がヒーヒー言うしかない。
意匠的表現の深掘り、人によって解釈評価が変わる部分、美意識を向ける職人的な範囲。ここはAIができたからといって劇的に精度や質が良くなる話ではない。
決定と責任は結局人。
借り物の20であっても判断は自分でできるから、表現としての一貫性は担保される。答えや正解のない世界なので「AIに奪われる」というより「AIを使いながら自分なりの最適解を探す」方向。
知らんけど。