IE3’s : Lab and Loan – 1

IE3 1年目の自由開発シリーズ(1/2)- 融資申請あれこれ

今年の7月末でIE3として1年目を終えました!!
お世話になった方々、知り合いの方々どうもありがとうございました。引き続きどうぞよろしくお願いします🙇

突然ですが、IE3をチームとして立ち上げた時から「1年のうち最後の3ヶ月は全く金にならなくていいので各人好きな事やって好きなものを作ろーぜ」と話していました。 んで自分は何を作ろうかな〜と考えたのですが、自分達で作りたいものを作ろうとした時にリアル空間との繋ぎ込みがどうしても必要になり、まずは先に場所作りが必要かな、という結論に(自己完結)。 なので僕は 1期目の粗利目標も見えたタイミングで、融資・助成金・ラボスペース作りを同時進行することにしてみました。

今回はその中で融資や助成金と、ラボスペース作りを2回に分けて記事を書いてみました。(AI雛形が7割)

IE3立ち上げの背景

そもそもIE3って誰やねん何やねんって話なんですが、元々unframeというグループ展を同年代(85年から±2年くらい)10人弱で7年くらいやっていたんですが、その中の3人でIE3というチームを2024年8月に発足しました。

あと個人的な話では前職で10年以上働く中で、技術的な知見や場数経験が溜まったことで案件が簡単に感じてきたり、どこかで一度やったような内容が増えてきたなーと感じてました。また、こんな事書くとまた怒られるかもだけど所属していた会社も技術的な挑戦をやらなくなったなーと感じていて、会社としても人としても歳を取ったなーって感じてました。(この辺りは事情も知っているのでここまで)誰だってそうだと思うんですが、10年以上とかやってるとある程度実績が溜まってきて、周りからも「この人にはこれを任せておけば安心」という期待値が固定化されてしまい、それがいわゆるコンフォートゾーンになってしまっているなーと感じてました。(繰り返しますがとてもありがたい事だし、良い事だとも思います。ただこれは誰への配慮や保険なんだと感じてきたのでそろそろ書くのやめてく) あと、やりたい事とやれる事を考えた時、受託制作だけだと自分にできる範囲を超えて制作する機会がなくなっていくのを感じていました。前職を含め20代中盤から30代中盤くらいにやっていた「コレは本当に自分に達成できるんか!?」という危機感や、毎回ちゃんと経験値を積めるような機会が欲しかった。まーやった事ない領域に進まないとこれ以上は仕方ないよなーと。そこで退職して自分たちで1からブランドを作って、もう一度クリエイティブに対して正座して向き合いたいなと思った次第。

「最後の3ヶ月は金にならなくても良い」の真意

この期間設定に特に意味はなく、自分のやりたい事だけをやる期間を設けることで、自分のできない範囲を含めたものづくりをする機会を強制的に作ろうという動きです。なのでその期間においては法人としての利益とかは一切気にしないよ、という意味でした。 僕がやりたい事はインスタレーションやメディアート、映像表現や建築意匠などで自分の好きなように世界を作る事です。その時やその場所に合わせて作品を作るので、実現したい一つの世界観というよりは、その時に応じて都度自由に考えられる制作における裁量権が一番大事って人間です。(AIにお前はそうって言われた)

自由開発期間:なぜ「場所作り」から始めたのか

んで自分は何作ろうかな〜と考えたのですが、自分達で作りたいものを作ろうとした時にリアル空間との繋ぎ込みがどうしても必要になり、まずは先に作るための場所作りが必要かな。。という結論に。(5年くらいリモートしてたんですが自室8畳くらいにおける機材置場やテスト環境にはマジで限界がある。笑) 結局4-7月を使ってLab関連の立ち上げに動いていました。Lab制作も自分にとってやったことない空間制作の一環って感じ。 ただ単純に法人用の賃貸は色々と金がかかる。。という事で僕は1期目の粗利目標も見えたタイミングで、融資・助成金・ラボスペース作りを同時進行してみることにしました。(地獄の年度末が終わった4月くらいのタイミングでの完全な思いつき)

なぜ融資を受けるか?

ありがたい事に1年目の半分を超えた辺りで年間の粗利目標までは大体見えていたので、「じゃあこの余った資金を元に創業融資を受けつつ場所作りしてみますか〜」と考えました。 あと、単純に受託制作スタイルでの資金の流れだと納品後に振込まで2ヶ月とかがザラにあって、手持ちキャッシュがないとその間に別の案件の外注費で死ぬ、みたいな事が普通にあるなこれ、というのが1年やってみた感想。(黒字倒産ってのはこれか〜と)

具体的に今必要なお金は場所を作る為の設備資金くらいだったんだけど、こういう経験もあって運転資金としても借りられるだけ借りておいた方が精神衛生上良いね、というのが個人的な結論。(あと税理士YouTuberからの教え)

融資申請の流れ

Step1: 情報収集と金融機関選び

税理士YouTuberさんの動画を見つつ(こいうのやテック講座を見ながらジムで走ったりするの好き)色々調べて、まずは信用金庫と日本政策金融公庫の協調融資を受けることに。

僕は地元信金の協調融資の商品を見つけて、まずは創業融資の相談をしに行ってみました。何故協調融資なのかとかはYouTubeとかで見てみてね ←人任せ
んで余談ですが、僕の場合だけか分かんないんだけど創業融資で1年目1発目とかで融資額1000万超え通ったとかはあまり聞いた事ないYO! って言われました。(どんな無謀な事業計画や融資希望額だったかはご想像にお任せします😉)

この辺りではまずは信金さんの訪問面談があり、事業実態があるかどうかなどの基本的な面談がありました。これを経てまずは信金さんでの法人口座開設へGO。

Step2: 世田谷区融資あっせん制度の発見

そこから額を調整したりしながら事業計画作ってたんですが、信金の担当の方から「世田谷区の融資あっせん制度使って借りるのが良いっすよ」と教えてもらい、そのまま世田谷区産業振興公社にあっせん書発行のお願いに行きました。 (要するに世田谷区のお墨付き貰ったら利息の大部分を世田谷区が持ったるわ!あ、元金自体貸すのは金融機関な!っていう制度)

んでこれ、世田谷区が90%以上利息持ってくれるんですよ。。実質の利用者負担0.1%とかありえん。1000借りて年1万とかよ?笑  この辺りは自分の住んでる市区町村などの制度も調べてみると良いと思います。 担当さんからは世田谷区はお金持ちですからね。。って言ってたので、新卒時代からずっと世田谷区に納税してきた自分としてはありがとう自分、そして周りのお金持ち。。という気持ち。

世田谷区融資あっせん制度について

世田谷区内の事業者向けの信用保証付き融資制度で、区が利息の大部分を負担してくれる仕組み。

詳細:公益財団法人世田谷区産業振興公社 – 創業融資あっせん

創業時や零細企業の利用者負担は金利 0.1~0.2%程度となることが多く、非常に好条件での借入が可能です。

Step3: 想定外の壁

自分はレバレッジジャンキーなので(この話はまた別の機会に)、信金担当さんに言われるまま世田谷区のあっせん制度で資金計画を作って持っていきます。

で、区の産業振興公社に行くと、「いや1年目での小口零細利用とするなら個人事業廃業からの法人成りが必要だよ?」と言われ、終わった。。となりました。

というのも事業の多少の被りはあるものの、個人事業を潰せない理由として作品制作におけるアーティスト人格みたいな話があり、個人事業主を廃業しちゃうと個人名義で作っていた作品制作ができなくなっちゃう、、という話をしてなんとか法人成りではなく創業融資枠で通させてもらいました。 この辺りもなぜ個人事業主を法人成りさせられないか?とかを明確に説明できた方がいいと思います。個人事業主を潰して法人成りで問題ない人は特に気にせずオッケー。

個人事業主と法人の併存について

同一人物が個人事業主と法人代表を兼ねることは可能ですが、事業内容に重複があると融資制度によっては制約を受ける場合があります。 特にアート活動など「個人の人格と不可分な事業」がある場合は、事前に明確な説明を準備しておくことが重要です。

Step4: 意外とスムーズな審査

こんな感じで面談が4回あってようやく斡旋書を出してもらえると聞いていたのですが、他の融資や助成金を同時並行で進めてたおかげで、

  • 既に事業計画とかも色々なバージョンが貯まってた
  • 企業ポートフォリオもできてた
  • 説明が大分簡単になってくる、あと単純に慣れてくる

あっさり2回目でこれで提出でいいよーとなり、5/16 の初回面談から 5/23 の提出完了まで 1週間、その後 6/2 の斡旋書発行まで 10日間で完了しました。ありがたやー。

Step5: 公庫との面談と最終調整

信金+区の斡旋書が出た後、今度は協調融資の為に6/9に日本政策金融公庫での面談も実施。

世田谷区のあっせん制度を活用した信金の金利が圧倒的に有利だったため、この辺りで融資配分を調整したりしました。
内訳は以下。ざっくばらん〜😳

  • 信金: 450 万円(運転資金)→ 年利約 0.1%
  • 公庫: 300 万円(設備投資+物件契約等)→ 年利約 2.4%

結局は協調融資としてではなく個別に融資を受けた感じで、総額750万円で創業融資としてはFinish。どちらも5年返済で半年の据置期間。どこかで折り返しの追加融資をもらう予定。(というか融資自体が明確な使い道よりそもそも法人の信用スコアを上げていきましょって考え)

協調融資の金利差活用

世田谷区の利子補給制度により信金の実質負担金利が 0.1%と破格だったため、運転資金部分を信金に集約し、公庫は設備投資に特化した配分に調整しました。 金利差を最大限活用した結果、全体の資金調達コストを大幅に圧縮できました。

Step6: 保証協会面談と最終審査

6/16に信用保証協会から2名の担当者と訪問面談を実施。信金の融資には信用保証協会の保証が必要で、事業内容や返済能力についての詳細な聞き取り調査確認が行われました。

アートとテクノロジーの融合という特殊な事業領域について、具体的な成果物や継続的な収益モデルを説明。過去の実績や受賞歴を提示することで、事業の信頼性をアピール。特に立地柄、どの審査や面談でもSakuraStageのファサードで一発で認知される事が多くありがたかったです。

Step7: 融資決定と実行スケジュール

6/17:日本政策金融公庫から 300万円の融資決定の連絡。→ 7/4 融資実行。
7/1:信用保証協会の審査を経て、信金からも 450万円の融資内定の連絡。→ 7/25 融資実行。

結果として希望額 750 万円が満額で承認されました。

過去の実績の威力

余談ですが、公庫でも区の産業振興公社でも保証協会でも、Shibuya Sakura Stage の事例などやはり人目に付く仕事の実績を見せると、「あぁ知ってるよ〜!」となり、一発で認知してもらえて担当者受けが良かったです。

Tokyo 2020 Olympics、Perfume、sakanaction といった大手クライアントとの実績や、複数の受賞歴を持っていることで、めっちゃあるIT系の申請のひとつではなく、ある程度ユニークな実績と技術力を持つ事業者として認識してもらえたのかなーと。この辺りはことごとく過去のお仕事と環境に感謝。。となりました🙏🙇

実績活用のポイント

  • 知名度のある案件: 一般の方でも知っているプロジェクト
  • 受賞歴: Japan Media Arts Festival、Cannes Lions 等の権威ある賞
  • 継続的な関係: 大手クライアントとの長期的な協業実績
  • 技術的な特殊性: アートとテクノロジー融合の希少価値

融資を受けた後の実際の変化

正直、Lab制作や機材購入については1年目の利益を全部使ってしまえって判断だったので融資資金は必須ではなかったんですが、案件で協力してもらう外注費などが受託制作の完了後の支払いを待ってからでなく都度支払っていけたり、キャッシュフローの健全化への恩恵が一番大きかったです。 日々の制作業務におけるキャッシュフローの心配事が減るというのが融資を受けた一番の恩恵。

信用金庫(世田谷区融資あっせん制度)ルート

初期相談・準備期間

  • 4/21:信用金庫 初回 融資相談
  • 4/25:信用金庫 訪問審査(法人口座開設のための確認、初回相談から 4 日後
  • 5/9:信用金庫 口座開設完了(訪問審査から 14 日後

世田谷区融資あっせん手続き

  • 5/16:世田谷区融資あっせん面談 1 回目(口座開設から 7 日後
  • 5/23:世田谷区融資あっせん面談 2 回目 & あっせん申込提出完了(1 回目から 7 日後
  • 6/2:世田谷区の融資斡旋書を信用金庫に提出(あっせん申込から 10 日後

保証協会審査・融資決定

  • 6/16:保証協会から 2 名訪問面談(斡旋書提出から 14 日後
  • 7/1:保証協会審査通過、信金 450 万円融資内定(保証協会面談から 15 日後
  • 7/25:信金 融資実行(融資内定から 24 日後

信金ルート総期間:4/21〜7/25(約 3 ヶ月)

日本政策金融公庫ルート

初期相談・申込

  • 4/22:日本政策金融公庫 初回 融資相談(物件未決定のため相談のみ 一旦ステイ)
  • 5/30:日本政策金融公庫 オンライン融資申込(初回相談から 38 日後

審査・融資決定

  • 6/9:日本政策金融公庫 担当者と面談(申込から 10 日後
  • 6/17:日本政策金融公庫 300 万円融資額決定(面談から 8 日後
  • 7/4:日本政策金融公庫 融資実行

公庫ルート総期間:5/30〜6/17(約 18 日)※実質的な手続き期間

融資全体:融資相談申込から融資実行完了まで約 4 ヶ月

まとめ

創業融資申請で学んだこと:

  1. 情報収集は重要 – YouTube でも何でも使って基礎知識をつける
  2. 地域の制度を調べる – 思わぬ好条件の制度があることも(世田谷区の 0.1%は破格)
  3. 過去の実績は武器 – 知名度のある仕事は信頼度アップに直結
  4. 個人事業と法人の使い分け – 事前に整理しておく必要あり(必要あれば)
  5. 書類は使い回せる – 複数申請することで効率化できる(AIにMDで書かせてPDF出力でOK)
  6. 面談の準備が成否を分ける – 事業計画の一貫した説明ができるように
  7. 金利差を活用した配分調整 – 制度の違いを理解して最適な組み合わせを模索
  8. キャッシュフロー改善が最大の恩恵 – 外注費の都度支払いが可能に

関連リンク・参考情報

注意事項:制度の詳細や条件は時期や状況により変更される場合があります。最新情報は各機関の公式サイトでご確認ください。


次回予告:「2. ラボスペース制作あれこれ」では、チーム内での合意形成から物件選択、実際のLab運営開始までの具体的なプロセスと、2期目から始まる本格的な作品制作について詳しく書く予定です。

あ、事前に言っておくと全部僕の場合こうだった、こう理解した、という話なので全然ちゃうやんけ!みたいなのはご愛嬌 😌

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